アファメーションとは ポジティブな自己宣言
アファメーションとは、なりたい自分を手に入れるための自己宣言のことです。「私はすでに、理想(なりたい自分)の状態になっている」という肯定的な文を用いて、繰り返し自分自身に宣言します。そうすることで、自分の潜在意識に働きかけ、自己肯定感と自尊心の強化をおこない、自分の理想の状態を叶えていきます。
アファメーションのメリット
アファメーションはなりたい自分を引き寄せるのに有効です。この章では、アファメーションを実践することで得られる効果(メリット)について解説します。
ポジティブな思考が身につく
アファメーションは繰り返し自分の価値観を肯定します。そのため、自身のポジティブな感情を引き出し、ネガティブな思考パターンを排除できるようになります。その結果、ポジティブな考えや言葉の使用が当たり前な状態になります。もし些細なミスをしても、すぐに気持ちを切り替えられるようになります。
能力を最大限に発揮できる
日本人の自己評価は、少しネガティブな傾向があるとされています(ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマン博士の著書『オプティミストはなぜ成功するか』パンローリング 2013 より)。そのために、本当は能力があるのに、ほかの人と比べてしまって落ち込んだり、自分はダメだと考えたりする傾向があります。
一方で、アファメーションには自己肯定感を高める効果があるため「本当の自分の実力を引き出す」ことができるようになります。
自信が持てるようになる
人は、できないことができるようになることで、自分に自信が持てるようになります。人材育成でも、小さな成功体験を積ませることで自信をつけさせることが大切です。自分に自信がつけば、態度や表情が変わるだけでなく、肝も据わってきます。そして「自分には困難を乗り越える力がある」という信念が植えつけられることで、思考パターンもポジティブになっていきます。
アファメーションを継続して成功体験を積むことで、自分に自信を持てるようになり、何事にも動じない強い心を手に入れられます。
影響力を発揮できるようになる
アファメーションによって自分に自信がつき、実績を上げられるようになると、周囲からも一目置かれる立場になれます。自分の経験をもとに、実績をあげるためのノウハウや考え方などを発信したり、相談に乗ったりすることで、周りの人が頼りにしてくるようになります。つまり、リーダーシップを発揮できるようになるのです。
さらにリーダーシップにともなう影響力も身につけられます。影響力を発揮できるようになれば、社員や仲間を巻き込んで新しい仕事にもどんどん挑戦できるようになるでしょう。
このように、アファメーションによるメンタル面での成長期待は大きいため、例えば1年後や5年後、10年後の自分の目指す姿を設定し、人材育成に活用することも有効です。
アファメーションの効果的なやり方
アファメーションは一人ひとりの想いや目標に合わせて作成し、実践するものです。ここでは効果的なアファメーションの基本的なやり方について説明します。
肯定的な表現にする
アファメーションはノートやメモ帳に書くとより効果を発揮しますが、その際、肯定的な表現で書くようにしましょう。一般的に、人の潜在意識は否定語が理解できないといわれています。例えば「私は、失敗しない」というアファメーションをつくったとします。すると、人は「失敗する」というところに意識が向き、「失敗」に潜在意識が引き寄せられてしまいます。そのため、結果的に「失敗」が実現されてしまいます。
「私は失敗しない」ではなく「私は成功する」といった肯定表現を使用するようにしましょう。
現在形を使う
アファメーションでは現在形を使いましょう。未来形の「◯◯になるだろう」や「◯◯になりたい」ではなく、「私は◯◯である」と書くのが効果的です。このような表現を使うことで「自分がすでにそれを持っている」あるいは「すでにその状態である」という意識が高まるからです。
具体的にする
アファメーションはより具体的である方が効果的です。例えば「私は成功しています」より、香川真司選手の小学校の卒業文集のように「背番号10番でハーフのセンター。ワールドサッカーに出る」とした方が、具体的な行動や状況を想像しやすくなります。
企業においても、企業理念(ビジョン・ミッション・バリュー)をできるだけ具体的に言語化しておくことが重要です。企業が実現したい未来であるビジョンを明確にし、ビジョン実現につながる行動指針であるバリューを具体的な表現にしましょう。そうすることで、従業員の成長を促し、自社の成長にもつなげられます。また、個人ベースでの行動指針をつくらせ、カードに書いて常に携帯させることも効果的です。
感情を込める
アファメーションに感情を込めることで、より強力になります。選択理論心理学の全行動モデルによると、人の行動の原動力は、思考ではなく感情であると考えられています。アファメーションに(肯定的な)感情を込めることで、「理想の状態」であるという意識がより強化されます。
「私は営業所のトップセールスになっている」よりも「私はトップセールスマンとして、取引先からいつも頼りにされていて、やりがいを感じています」とした方が、より深く潜在意識に刻み込めます。
反復する
アファメーションによって自分のセルフイメージを変えるには、アファメーションを何度も繰り返すことが大事です。アファメーションを日々のルーティンのなかに組み込み、反復して潜在意識に浸透させるようにしましょう。紙に書いて目に見えるところに貼っておくなど、思い出しやすくする工夫も効果的です。
アファメーションの例文
ここでは、自信を高めたいとき・ストレスを感じているとき・成功したいとき・目標を達成したいときのアファメーションの例文を紹介します。この短い例文に、自分の状況や感情を加えることで、自分自身のアファメーションを作成できます。
自信を高めたいとき
- 私は自信に満ちている
- 私はうまくできる
過去に経験した、自信に満ち溢れていた場面を思い出し、そのときの気持ちを呼び起こしながら唱えると効果的です。こちらをもとに作ったアファメーションの例文を次に示します。
「今回のプロジェクトの目標値は高いが、私は必ず達成できる自信に満ちている」 |
ストレスを感じているとき
- 私はリラックスして落ち着いている
- 私は何もかも大丈夫
過去の成功体験(似たようなストレスを抱えていたけど、うまく難を乗り越えてストレスが解消された体験)があれば、そのときの感情を思い出して唱えると効果的です。こちらをもとに作ったアファメーションの例文は次のとおりです。
「今、大きな試練に直面しているが、私は同様な試練を乗り越えた経験があり、乗り越えられることを知っている。今、私はリラックスして落ち着いています」 |
成功したいとき、目標を達成したいとき
- 私は成功している
- 私はますますうまくいく
- 私は成功に向かって進んでいる
成功しているイメージをしながら唱えると効果的です。こちらをもとに作ったアファメーションの例文としては、以下があるでしょう。
「私は、社内でいちばん商品知識が豊富なために、いつも取引先から頼りにされるトップセールスマンとして、成功している」 |
アファメーションの注意点
前章で、アファメーションの効果的なやり方を説明しました。この章では、アファメーションをおこなう際の注意点について説明します。
主語は一人称の「私」にする
アファメーションを生活に取り入れる際、主語の一人称は「私」にしましょう。日本人は自己主張が苦手だったり、個人よりチームを優先したりする傾向がありますが、アファメーションでは効果的ではありません。具体的には「私はすでに私がなりたい状態にある」という使い方をします。これにより、自分のなりたい姿を潜在意識に刷り込めるのです。
他人を含めた使い方をする場合でも「私」を主語にします。例えば、部活の後輩を次の大会で本選の出場に導きたいとします。そのような場合は「私は、後輩の◯◯君に対して経験にもとづいたアドバイスをして、次の大会で予選突破して本選出場に導く」という使い方をします。
これは、チームで目標を達成したいときも同じです。 会社や部・グループの目標を達成するためには、自分自身がすべきことを明確にする必要があります。このとき、一人称を「私」にして自分の役割やアクションを決めましょう。そうすることで、チームの目標がよりいっそう自分ごとになります。
本当に自分が望んでいることを書く
アファメーションのつくり方は難しくありません。ただし、本当に自分が望んでいることを明確にしておく必要があります。日本社会は同調圧力が高いため、どうしても周囲の目を気にしたり、影響を受けたりしがちです。そのため、「世の中的にはこういうのが認められるから」「これを欲しがっている人が多いから」という理由で、自分も欲しくなってしまうことが多々あります。
私たちは、物や体験が欲しいのではなく、それらを手に入れることで得られる感情が欲しいのだと一般的にいわれています。周囲に影響されて欲しくなってしまったものを手に入れたことで得られる感情は、自分自身で欲しいと思ったものを手に入れたときの感情とは違っている可能性が高いといえます。
そのため、欲しいと感じた理由だけでなく、本当に自分が望んでいることを明らかにし、それをアファメーションに書くことが重要なのです。
感情を込めておこなう
アファメーションを繰り返しおこなう際に「叶うか叶わないか心配なので何度も反復しよう」という気持ちで反復するのは逆効果です。「あの気持ちをもう一度体験したい」というような気持ちで、感情を込めておこなうことが良いでしょう。
目標が変わったら変える
人の価値観は日々の経験の積み重ねや周囲の環境の変化によって変わっていきます。そのため、自分がなりたい理想像が変わったときは、目標も変わります。例えば「出世したい」という目標があったとします。時間が経って、改めて自分と向き合ってみると、実は「お金持ちになりたい」という目標が正しかったということがあります。
自分が掲げた目標は定期的に見直し、自分のなりたい理想像がこれで正しいのかを考えていくことが重要です。
社員の自己成長を促し自社の成長につなげる
アファメーションは自分自身の理想の状態を潜在意識に浸透させ、やりたいことを実現するために有用な方法です。例えば、効果的なアファメーションのつくり方で説明した「主語を一人称の私で書く」方法は、全社や部署の目標を達成するために、自分自身の役割やアクションを明確化する際に役立ちます。
一方で「本当に自分が望んでいることを書く」「感情を込めておこなう」などは、テクニックとして活用するというわけにはいきません。会社の理念が従業員に十分に浸透し、従業員が会社から大切にされていると感じていることが前提条件になります。
逆に言うと、そのような状態であれば、アファメーションにより社員の自己成長を促し、自社の成長につなげることが可能なのです。
この記事の内容を参考にアファメーションを実践し、ビジョン実現に社員が一丸となる、魅力的な会社をつくりあげていただきたいと思います。
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